「あのね柚華、急な話なんだけど、お母さん出張が決まってね。しばらく留守にするけど、柚華なら一人でも大丈夫よね?」


「え……出張?」


私は戸惑いを隠しきれずに目を見開いた。
しかし、お母さんはもうフライパンしか見ていない。


「……わかった。私は大丈夫だから、気をつけて行ってきてね」


「うん、ありがと柚華」


お母さんが期待する言葉を口にして、笑顔を作る。
昔からずっとしてきたことだ。
今更一人で過ごす時間が増えたところで、何も変わらない。
そう自分に言い聞かせて、私は不安な気持ちを胸の奥に押し込めた。