クールな野良猫男子には逆らえない。

「じゃあ、私こっちだから」


大学へはバスを使って通っている。
悠雅がこれから向かう不動産屋は、電車に乗らなければ行けない街にある。
バス停と電車の駅は反対方向だ。
つまり、私達はマンションを出たらそれぞれの行き先へ向かうために別れなければならない。


ただそれだけのことなんだけど、長年離れ離れだったせいか、ほんの少しの間でも悠雅から離れるのが嫌だった。


また黙っていなくなったりしないだろうか、とありもしない未来を想像して俯く私に、悠雅が言った。


「柚華、顔上げて」


何?と言おうとした唇が、突然あたたかいものに包まれる。
すぐ目の前に悠雅の整った顔があり、悠雅にキスされていることを悟った。