「柚華、こんなところで寝ると風邪ひくわよ」


お母さんの声に起こされた私は、一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。


何だか懐かしい夢を見ていた気がするけど、なぜリビングのソファの上で毛布を被って寝ているのか……徐々に思考がはっきりしてきて、ようやく悠雅のことを思い出し、がばっと身体を起こす。


窓から朝日が降り注ぐリビングには悠雅の姿はなく、キッチンから朝食を作っているお母さんの鼻歌が聞こえてくる。


時計を見ると、すでに6時を回っていた。


私は家中を探して回ったが、悠雅の姿はどこにもなく、玄関にも悠雅の靴はなかった。


……帰ったのかな。


まさか、お母さんに見つかって追い出されたのでは……と不安になり、キッチンへ向かうと、お母さんが元気に挨拶をした。


「おはよう、柚華」


「……おはよう……」


自然と、笑顔がぎこちなくなる。
だがお母さんは私の変化には気付かずに、ウインナーを炒める手を止めると私に向き直った。