「じゃあ、お祈りしよう」


「お祈り?」


私の言葉に、隣に立つ悠雅が聞き返す。
私は悠雅に視線を向けて、頷いた。


「神様に、お願い事を祈るの。目を閉じて、パンパンって2回手を叩いて」


「うん。わかった」


私の指示を悠雅は素直に受け入れ、ふたりでご神木に向かって手を合わせる。


ずっとずっと、悠雅と一緒にいられますように。


心の中でそう繰り返して、目を開けると悠雅はまだ手を合わせて祈りを捧げていた。
ひたむきなその横顔を見て、どうしてか胸が苦しくなったのを憶えている。
しばらくして、悠雅は目を開いて顔を上げた。


「帰ろっか」


「うん」


再び手を繋ぎ、私達は家路を急いだ。


両親の離婚が決まったのは、その翌日のことだった。
結局私と悠雅は引き離され、私は悠雅とちゃんとお別れもできないまま、この街を離れた。


私は神様なんていないんだ、とひとりで涙が枯れるまで泣きじゃくった。