私は便箋をくしゃくしゃに握りしめて俯いた。
両頬は流れた涙で濡れている。


悠雅も私と同じように、私の記憶を夢に見ていた。
だから私のことをあんなにわかってくれていたのだ。


いつの間にか、地平線から朝陽が顔を出し、高台にある境内を優しく照らし出す。
私は首をもたげてご神木が見守る街を見た。
眩しい光に照らされた街はキラキラと輝いて見えて、あの一軒一軒に名も知らぬ家族が住んでいるのだと思うと、何だか途方もない奇跡のように感じられた。


人と人が出会って、恋に落ちて、夫婦になり、子供が生まれて家族になる。
それはどれくらい低い確率だろう。


私と悠雅はそんな営みを繰り返して、ようやく出会えたのだ。
そしてお互いに想い合うことができた。
それはきっと、とても幸せなことだ。決して不幸なんかじゃない。


私は涙を拭って手紙を箱にしまい、掘り返した土を元に戻して、箱を大事に抱きしめながら境内から歩き出した。


もう身体中土まみれで酷い有様だが、そんなことはどうでもよかった。
自分の中で何かが生まれ変わったような、晴れ晴れとした気分だった。