あの雨の夜、俺はまだ暗闇が怖い弱虫のままで、苦しくて突発的に家を出ようとした。

そんな俺に声をかけたのは、継母だった。彼女は俺にあんたの家の住所を渡して、会いたいなら会いに行ってあげなさいと言って笑った。

そして俺はあんたの家へ行った。あんたは俺を受け入れてくれて、昔と変わらず俺に優しくしてくれた。

相変わらず人のために我慢して笑ってるあんたを見て、俺が守ってやりたいと思った。

あんたは知らないと思うけど、俺は子供の頃からずっとあんたを女として見てた。

叶わない恋だとわかっていたから、やけになって他の女と付き合ったりもしたけど、結局あんたのように好きになれる相手には出会えなかった。

だから、あんたが俺のことを弟としてしか見ていなくても、いずれ離れなくてはいけなくても、あとほんの少しでいいから側にいたかった。

でも、あんたが俺を弟だと思ってないと言ってくれた時、本当に嬉しくて、このまま時間が止まってしまえばどんなにいいだろうと願った。

神様なんていないと思っていたけど、初めて神様に感謝したいと思った。