クールな野良猫男子には逆らえない。

「……碓氷くんがね、転校する直前に私に頼みに来たの。柚華の側にいてやってくれって……自分はもう側にいてやれないからって」


悠雅が、私のことを菜々に託していた?


そもそも、私が菜々と親しかったことを悠雅は知っていたの?
菜々のことを悠雅に話したことはなかったはずなのに。


言葉を失う私に、菜々は続ける。


「……碓氷くんは、柚華のことほんとに大切に思ってるよ。きっと何か事情があるんだよ。今まで話せなくてごめんね……柚華」


菜々が震える私の身体を優しく抱きしめる。


「泣いていいよ」


その言葉に、私の中でかろうじて保っていた理性が吹き飛び、気がつけば菜々にしがみついて声を上げて泣いていた。


菜々も泣いているのか、私の背中をさすりながら鼻をすすっている。


私達は周りの生徒達の目も気にせず、いつまでも抱き合っていた。