「今、二人っきりなんだけど。こんな真夜中に男家に入れるとか、もうちょっと警戒ぐらいしたら?」


悠雅が離れる気配がして、私は閉じていた目を開けた。
悠雅はもう前を向き、こちらを見ようともしない。


「……警戒なんかする必要ないでしょ?悠雅は弟なんだし」


そう言って再び悠雅の髪にドライヤーをあてる。
だが、悠雅は溜息をついてボソッと呟いた。


「……なんにもわかってねぇな」


わかってない?
何をわかってないと言うのだろうか。


そう思いつつ、私は悠雅の髪を乾かす作業に没頭し、この気まずい空気に気付かないふりをした。
しばらくしてドライヤーのスイッチを切り、「終わったよ」と声をかけると、悠雅は眠そうに目を擦りながらソファに横になった。