クールな野良猫男子には逆らえない。

私が女子トイレへ向かうと、中から自分の名前が聞こえてきて、思わず足を止めた。


「瀬戸さんってさぁ、最近なんか変じゃない?いっつも暗い顔して、スマホばっかり気にしててさ。全然笑わなくなったし、なんか怖くない?」


「わかる。授業も全然聞いてないみたいだし、なんか変な人と付き合ってるんじゃないの?」


笑い混じりのその声は、いつも菜々と一緒にいる女子達のものだった。


周りからはそんなふうに見えていたのか、とずっと自分のことで精一杯だった私は驚いた。


「てかさぁ、あの噂知ってる?瀬戸さんが義理の弟と付き合ってるって話」


突然悠雅の名前を聞いて、びくりと肩が震えた。