「あ、瀬戸さん!?」


気がつくと、私は教室を飛び出していた。
廊下を行き交う生徒達にぶつかりながら、謝りもせずにひたすら走る。


そうして辿り着いたのは、悠雅のクラスの教室だった。


「……あの……碓氷悠雅は、ここにいる?」


教室で立ち話をしていた男子生徒に話しかける。


誰か、転校だなんて嘘だと言って欲しい。
悠雅なら今日学校に来てるよ、と言って私を安心させて欲しい。


だが、そんな私の祈りもむなしく、男子生徒は訝しげに私を見ながら答えた。


「碓氷なら、3日前にいきなり転校してったけど……」


私はふらふらと後ずさり、かろうじてお礼を口にすると、肩を落として教室を離れた。


やがてチャイムが鳴り、生徒達が自分の教室に戻る中、私はひとりとぼとぼと廊下をあてもなく歩いた。