クールな野良猫男子には逆らえない。

「……あの、これ……ロールケーキ。良かったら一緒に食べない?お母さんが出張から帰って来てね、そのお土産なんだって。だからその……」


もううちには来ないで。
その一言がなかなか出てこない。


紙袋を差し出したまま固まる私に、悠雅がゆっくりと近付く。
そして、ふっと唇を歪ませた。


「ちょうど良かった。俺、もうあんたの家には行かないから」


「……え?」


まさか悠雅のほうからそんなことを言われるとは思わなくて、私は目を丸くした。
お母さんが帰ってきたから、気を遣ったのだろうか。


だけど、次に悠雅が放った言葉は、私の胸を深く抉るものだった。


「もうあんたとは会わない。赤の他人に戻ろう」