「お母さん、今日も遅くなるの?」


朝食後、いつも食べているヨーグルトをスプーンで掬いながら聞くと、お母さんは読んでいた新聞から顔を上げた。


「うん。ごめんね、毎日遅くまで一人にしちゃって」


「ううん、私は大丈夫。お母さんこそ無理しないでね」


「ありがとう、柚華(ゆずか)


お母さんは申し訳なさそうに言って、新聞をテーブルに置くとバッグを持って立ち上がった。


「そろそろ行かなきゃ。鍵、閉めといてね」


「うん。行ってらっしゃい」


私はヨーグルトを食べる手を止めて立ち上がり、玄関までお母さんを見送る。


その背中がエレベーターの中に消えるのを確認してからドアを閉め、鍵をかけてリビングに戻った。