手に持っていた扇子を、わざと大きな音が鳴るようにぱちんと閉じる。
■
「貰い手のない、問題のあると悪い噂の立っている、独り身で寂しい思いをしているあなたを、私が娶ってあげましょうと」
……。随分恩着せがましい言い方をする。皆そうだ。
僕と結婚してくださいと頭を下げる者はいない。結婚してやってもいいよ、可哀そうな行き遅れ女公爵と。自分は親切で言っているんだよ、いい人なんだよと。どこまでも私を馬鹿にした態度で、提案に私が喜んで乗るだろうと思っている。
太って禿げてて女にだらしなくて先妻の子を道具のように使おうとしてる15も上のおっさんと本気で私がありがたがって結婚するとでも思っているのだろうか。
だとすれば、私は、どれだけ世間ではろくでもない噂を立てられているのだろう。
「決めたわ」
私の言葉に、ツルピカーノ侯爵がガタリと音をたてて椅子から立ち上がった。
「そうですか、では早速婚約誓約書に署名を」
と、胸元から紙を取り出して広げ始めた。
どこまで用意周到な。すでに自分の名前書き込んである。あ、ツルピカーノじゃなかったのね。
「お、お、お嬢様?まさか、本気ですか?」
30歳、もうお嬢様と呼ばれるような年齢でもないし、父が亡くなり私が当主なのでお嬢様ではないんだけれど……。
子供のころから私のお世話をしてくれている侍女のハンナにしてみれば、私はいつまでもお嬢様なのね……。
ハンナが青ざめた顔をしているのは、私のためなのか、それとも今後あの男を旦那様と呼ばなければならない自分のためなのか。
まぁ、両方よね。でも、大丈夫。
「侯爵様はお帰りになるそうよ。お見送りを」
「は?いや、まだご署名いただいておりま……」
私の言葉に、テキパキと、侍女たちがツルツル侯爵を部屋の外に追い立てた。あくまでも上品に。
「ハンナ、決めたわ。私、結婚しない。もう、この先もずーっと結婚しないことに決めた!」
「え?ええ?いや、あの、お嬢様、ですが……」
ハンナが閉口している。まぁ、そうよね。
ハンナは18で結婚して、子供2人産んで、その子供も今は10歳と16歳。旦那様と今もラブラブな34歳女子だもんね。
女の幸せは結婚です!みたいなタイプだ。
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「貰い手のない、問題のあると悪い噂の立っている、独り身で寂しい思いをしているあなたを、私が娶ってあげましょうと」
……。随分恩着せがましい言い方をする。皆そうだ。
僕と結婚してくださいと頭を下げる者はいない。結婚してやってもいいよ、可哀そうな行き遅れ女公爵と。自分は親切で言っているんだよ、いい人なんだよと。どこまでも私を馬鹿にした態度で、提案に私が喜んで乗るだろうと思っている。
太って禿げてて女にだらしなくて先妻の子を道具のように使おうとしてる15も上のおっさんと本気で私がありがたがって結婚するとでも思っているのだろうか。
だとすれば、私は、どれだけ世間ではろくでもない噂を立てられているのだろう。
「決めたわ」
私の言葉に、ツルピカーノ侯爵がガタリと音をたてて椅子から立ち上がった。
「そうですか、では早速婚約誓約書に署名を」
と、胸元から紙を取り出して広げ始めた。
どこまで用意周到な。すでに自分の名前書き込んである。あ、ツルピカーノじゃなかったのね。
「お、お、お嬢様?まさか、本気ですか?」
30歳、もうお嬢様と呼ばれるような年齢でもないし、父が亡くなり私が当主なのでお嬢様ではないんだけれど……。
子供のころから私のお世話をしてくれている侍女のハンナにしてみれば、私はいつまでもお嬢様なのね……。
ハンナが青ざめた顔をしているのは、私のためなのか、それとも今後あの男を旦那様と呼ばなければならない自分のためなのか。
まぁ、両方よね。でも、大丈夫。
「侯爵様はお帰りになるそうよ。お見送りを」
「は?いや、まだご署名いただいておりま……」
私の言葉に、テキパキと、侍女たちがツルツル侯爵を部屋の外に追い立てた。あくまでも上品に。
「ハンナ、決めたわ。私、結婚しない。もう、この先もずーっと結婚しないことに決めた!」
「え?ええ?いや、あの、お嬢様、ですが……」
ハンナが閉口している。まぁ、そうよね。
ハンナは18で結婚して、子供2人産んで、その子供も今は10歳と16歳。旦那様と今もラブラブな34歳女子だもんね。
女の幸せは結婚です!みたいなタイプだ。


