結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています

 戦争はずいぶん長いこと起きていないし、この先も戦争がない世の中が続けばいいと思っている。必要な時代にならない方がいいんだけれど。
「もちろん、戦争は起きないに越したことはありませんが、騎士科や兵科では野営訓練や、移動実習など有事に備えて訓練は毎年していますし、たぶん国でも兵たちに同様の訓練はしているんじゃないでしょうか?また、ある程度どの城や砦でも備蓄食料は必要でしょうし……。何も戦時だけではなく、不作や色々なことへの備えとしても……」
 そうか。
 騎士科なら予算も潤沢だろうし……庶民には「値段分の価値を感じられずに売れない」かもしれないけれど、この値段でも欲しいと思う価値を見出している人もいる……かもしれないって話ね。
 というか、取りあえず公爵領で備蓄用に乾燥させたものを保存しておきましょう。どれくらい保存できるのかとかも検証した方がいいでしょうし。
「ありがう、アルバート。貴方のおかげで、午前中の視察はうまくいきそうよ」
 素直に喜びを口にすると、アルバートは一瞬だけ嬉しそうな顔を見せてすぐに表情を引き締めた。
 何?褒められた嬉しいって顔をしていいのよ?それとも、そんなことも思いつかなかった私は領主としてたより無くて……。
 頼りない領主のくせに、上から目線でって、むっとしちゃったとか……?
「こんなこと、騎士科の生徒なら……誰だって……褒められるようなことじゃない……僕は……」
 アルバートが謙遜する言葉を口にする。
 騎士科の生徒なら誰だって思いつくですって?そうかな?そんなことないと言おうとしたけれど、聞こえないふりをして話を逸らすことにした。褒められることに罪悪感みたいなことを感じているのならこれ以上そんなことないすごいわよと続けても負担になりそうなので。
「アルバート、騎士科への売りこみの前に感想を聞かせて頂戴。ほら、飲んでみて。騎士科の野菜ジュースより絶対に美味しいから!」
 まずは見本とばかりに、人参を口に入れてから、野菜ジュースをごくごくと飲んだ。

 ええ、人参を素早く飲み込むためにね。人参の味を口の中から消し去るためね。
「ふ、ふふ、もしかして、リーリア様は、人参が苦手なんですか?」
 アルバートが楽しそうに笑う。
「そ、そんなことは、ありませんわ、わ、私は」
 大人ですし、アルバートの親になるんですもの。好き嫌いなんて……。