結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています

「あ、はは、あー、は、そうですよね、話、ああ、そうだ。寝る前によく母も……あ」
 しまった。本当のお母さんを思い出させちゃった?
 ……ズキンと胸が痛む。
 仕方がないこととはいえ、公爵家の養子にするからには、実家との縁はすっぱり切ってもらう必要があって、二度と実家の人間を母とも父とも兄とも呼んではいけないし、向こうにもうちの子だと言うことは今後一切ダメだと……いう話はしてある。公爵家と縁続きになったと、よからぬ事件にお互い巻き込まれないためだ。もし、正式に養子縁組の誓約書を提出した後にアルバートを「我が子だ」と言う発言をすれば、犯罪者になってしまうというくらい、取り決めは厳しい。わがもの顔で権利を主張し始める実父や実母、得体のしれない親戚たちという問題が過去に色々あったからできた決まりだ。
 思ったよりも、大きな子だったけれど、これで良かったのかもしれない。

 親が恋しくて恋しくて……泣きつかれて寝てしまうような子供じゃなくて……。
 とはいっても、アルバートもまだ18だもの。泣かないだけで、辛いんだろうな。
 私……もっと大人だけれど、父が亡くなってとても寂しいんだもの。
 セバスの言う通りだ。今日から私が貴方の新しいお義母さんよ。前のお母さんのことは忘れなさい……なんて、なんて酷いことなんだろうか。
 性急にことを勧めてはいけませんという言葉が改めて胸にしみ込んだ。
(天の声*当然ながら、アルバートは何にも話は聞いてなかったから、悲しんでいるようなことはない。ただの杞憂である)
 アルバートが、言葉を飲み込み、おとなしくベッドの端に腰かけた。ここなら話の途中で眠くなったらすぐに寝られるからね。
 その近くに、椅子を一つ持ってきて腰かける。
「あのね、アルバートは18歳でしょう?だから、私が18歳のころの話をしようと思うの。別に何か聞きたい話があったら、言ってね」
 と、前置きをして話始めた。例の領地の北の話ね。
 初めのうちは、アルバートはニコニコしていたけれど、途中からとても深刻な表情を見せる。
 あれ?楽しくないかな、この話?
 心配になりやめようかと何度か思ったんだけれど、そういえば、お父様も考え事を始めるとこんな深刻そうな顔をよくしていたなぁと思い出してからは、気にせず話を続けることにした。