敵性体は二体とも正面にいて、微小飛翔体の射出装置らしい物を右の1体はこちらに向け、左の1体は右の敵性体に向けていた。

 振動知覚で何か言葉らしい物を発しているのを感じたが、現在の言語ライブラリの中に該当する単語が無く、意味は理解出来なかった。

 そして、左の敵性体が何か言った後、二体とも射出装置をこちらに向けてきた。

 嵐の反射防御動作が反応し、更に地脈の活性化により、防御呪紋が起動する。

 右腕が活性化し、放たれた微小飛翔体を受け止める。

 微小飛翔体の運動エネルギーを地脈変換して、右腕の防御呪紋が吸収する。

 更に右の敵性体が何か言った。

 その時点で、嵐の言語解析機能が、ザッハとサンディと言う単語を敵性体の固有名と認識し、表示した。

 更に、微小飛翔体が連射される。

 それらを右腕の防御動作に任せ、活性を始めた戦術脳が、サンディの投げてきた球状物体への対応を算出した。

 敵性体がホールから通路へ退避するのを確認した。

 何らかの爆発物の可能性があった。

 全身の防御呪紋を地脈で迎起させ、麗輝を全身で抱え込むようにして球状物体から背中で庇った。

 爆発と閃光が、ホールを揺らす。

 爆風と破片が、嵐と麗輝に襲いかかる。

 溜められた地脈を運動エネルギーに再変換して、爆風と破片を弾き飛ばした。

 致命的な爆風がホールを満たした。

 嵐は更にそのエネルギーを吸収し、地脈変換して全身の呪紋に吸収させた。

 一気に、呪紋が活性化し、身体機能が更に解放された。

 だが、周囲の地脈の力が弱いので、その状態が長く続かない事も予想出来た。

 更に、今の爆発で、ホール自体の強度も限界を超えたようだった。

 嵐と麗輝の周りに、崩れ始めた天井の一部が落下してきた。

 嵐は麗輝を抱きかかえると、ホールから通路へ脱出した。