「てか上月、時間平気?なんか用ある?」
「ないよ。ほんっと暇」
「そかそか」
安心したような彼が、わたしを見下ろす。
少し目線の高い、千代田。同じ高さに座っていても、同じ高さにいてくれない。
男女の声が、遠くからした。
──でさぁ、ふたりって付き合ってんの?なんて聞かれて。
──おれら、付き合ってるように見えんのかあ。
「……すきなひと、いるの?」
あまりにも視線がこちらに向いたままだから。つい、こんなことを聞いた。
ぱちぱちとまばたきをした千代田が、右手に持っていたスプーンのうつわ部分を、散り散りになった氷の欠片に埋める。
「あー」
空いた右手。肩から落ちかけていた黒いTシャツのふち部分を引っ張り、鎖骨の上に戻した。
彼のその一連の動作を見ながら、何度息を吐いただろう。
夏の匂いが、する。
「どうでしょうね?」
べつにいないですけど? みたいな。



