好敵手~真実探求ハムカイザー

 天野、岩宿、安川の前には俳鰤お薦めの鰤料理が並んでいる。鰤のアヒージョや軽くソテーしてパセリと塩胡椒のソースをかけたものなど見るからに美味しそうなのだが、3人とも食が進んでいない。
 店に入るや否や外で仰怪人が暴れだした。すぐに一件落着となったのだが、それが逆に新たな災の種になりそうだ。
 天野が携帯を見た。何か連絡が来たようだ。

「とうとう奴が動き出した。」
 少し間を置いて天野が口を開いた。
「 奴ってことは。」
「ハムカイザーか。」
 安川と岩宿は確認の問いかけをした。
「対策室の西郷さんからの連絡だ。現れたのはここから100mと離れていない。」
「 なんだと。今から行くぞ。対策室では手に負えんだろ。」
「 今から行っても遅い。奴は消えた。」
「 人前で堂々と現れて消えたのか。大胆な奴だな。」
 安川は驚きの表情を隠せないでいる。

 入口のドアが開いた。 スタッフは〈いらっしゃいませ。〉と声をかけたが、すぐに〈失礼しました。お帰りなさいませ。〉と言い直す。
 真が笑いながら〈今戻ったよ。表が凄いことになってるね。〉とスタッフに告げる。
「そうですね。動画で生中継されていたから、それを携帯で見ていたお客様もいましたよ。新怪人は煙のように現れて煙のように消えちゃったみたいです。」
 スタッフは興味津々のようだ。
(けむ)に巻いたのか。正義の味方にしては明朗闊達な登場じゃないね。」
「え、新怪人って正義の味方なんですか。」
「だって仰怪人を取り押さえて警察に引き渡したじゃない。」
 真はスタッフに言った。