「ところで兄さん、神々が降臨したのは高千穂峡と高千穂峰のどっちだと思ってるんだ。」
 酒のせいもあり、実は饒舌になって兄に話しかける。
「受け売りなんだが緑茶五右衛門(りょくちゃのごえもん)と言う 郷土研究家は〈両方だよ〉と言っているよ。」
「両方って二手に分かれて降りたってこと。」
「 違うんだ。昔の神様はダイダラボッチじゃないけど大きかった。だから大きな神様は先ず左足を高千穂峡に降ろして、地面にめり込みそうなんで高千穂峰に右足を引っ掛けたんだそうだ。それでもまだめり込みそうで大きな鉾を高千穂峰に突き立てたんだとね。」
「 それで高千穂峰には逆鉾なのか。」
「お前もそう思わないか。高速道路の山之口サービスエリアから高千穂連山を見たら本当に鉾の刀身が地面に刺さって巨大な逆鉾に見えるだろ。」
「 山之口は[大仁弥五郎伝説]もあるね。」
「緑茶先生は弥五郎殿(やごろうどん)と熊襲征伐話も関連付けてるな。」
 真の話に熱がこもってきた。実は頷きながら聞いている。