好敵手~真実探求ハムカイザー

「では、まず君の見たハムカイザーについて話してくれないか。」
 山村が問いかけると男は深呼吸をして自分を落ち着かせ話し始めた。
「よく解らないがあの黒い影にまとわりつかれると気持ちが良くなる。」
 西郷はメモを取っている。山村は薬物が使用された可能性を視野に入れた。
「君に逮捕歴はないようだが、過去に大麻とか覚せい剤とかを使ったことあるのか。」
 山村がそう言うと男は怒った口調で答えた。
「 ふざけるな。俺がそんなことをする人間だと思っているのか。だから警察は嫌いだ。世の中も嫌いになるんだ。お前らもう少し勉強したらどうだ。お前らがハムカイザーについて知らないのに俺が知ってる訳ないだろ。どうしたらあのお方に会えるのか教えて欲しいよ。あの方の黒い影にまとわりつかれると気持ちよくなる。それは中国医学の鍼を打たれた時のようにいい気持ちだ。投薬や手術に頼る西洋医学とは大違いなんだよ。お前らみたいに事件が起きてから動き回る無能警察なんかじゃない。地道に仕事して事件を未然に防ぐ警備員のような東洋医学なんだよ。」

 山村は西郷に耳打ちした。
「緑茶先生なら何か知っているかもしれませんね。尋ねてみますか。」
「それは無理だな。以前、〈出版社から取材費をもらっている以上は守秘義務がある。〉と断られた。金額も微々たるものだ。おそらく我々の捜査協力依頼を拒否するための合法的な手段だろ。立件しなければ無理だ。」
 西郷がそう言うと山村は言った。
「緑茶先生はまだ初動ミスを根に持ってるんですかね。」
「初動ミスも何もないだろう。二回やらかしているんだ。」
 西郷は悔やんでも悔やみきれない。緑茶五右衛門の冤罪疑惑には二回とも仰怪人が絡んでいる。しかも二度目は仰怪人に騙された西郷の姪っ子にあたる警官だった。