「瑠海、ちゃんと待ってたな。」

「あの、何をするん、あ、
何するの?」

「ん〜、お互い抱きついて出来なかった方が負けな。」

な、何それ〜!

罰ゲーム感、半端ない。

「じゃ、俺からな。」

こっちに近づいて来るのではなく、

私の手を引っ張って。

ふわっと神崎さんに抱きついたような感じになった。

神崎さんからは、甘い匂いはしなくて。

チャラいけど、あんまり香水はしてないぽくて。

神崎さんの手は私の背中にあって。

きっと、170cm以上の身長があって。

私は、160cmくらいだから上を見上げないと、顔が見えない。

神崎さんがどんな顔をしているの分からない。

でも、なぜだか私の鼓動は、速くて。

なのに、時は流れるのは遅くて。

「神崎… 」

「なに?」

あ、無意識に…

「わたしの知り合いにも神崎って苗字の人が居て。たまたま、
思い出して。」

同一人物じゃないのに、なぜか私の胸はドキドキいってる。

「桜乃は、珍しい苗字だな。」

身長差で神崎さんが私の耳でつぶやいているような感覚になる。

「ブー、ブー」

スマホだ。

「電話出るので。」

神崎さんから離れてスマホを手に取った。

「夜ご飯の仕込みしなきゃいけないから、少し遅れる〜。」

「夏音、分かったよ〜。後でね〜。」

なぜか、私の胸はまだドキドキしている。

神崎さんは、何かを考えるようにスマホをいじっていて。

私が戻ってきたのを確認して、手を止めた。

「急がなきゃいけないんだろ?」

「次、瑠海の番。 」

ただ、抱きつくだけなのに。

それなのに、恥ずかしくて。

「瑠海」

「神崎さん?」

上を見上げると、少し赤く顔をしていた。

「今日は、俺の負けだ。明日な!」

そう言って、走っていった。