「瑠海ちゃん、なんとなく薄々気付いてたけど、芸能人の海桜 瑠海
ちゃんなんでしょ?」

予想はしていたものの、言葉に息が詰まった。

「瑠海、言ってもいいんじゃない?」

「そっちの方が楽になると思うし。」

楽になる?

今のドラマで出演してるからかなぁ?

「僕は別に、言いふらすつもりとかはないよ。」

「僕のこと信用出来ないね?」

少し悲しそうな顔をしていて。

信用って言葉に、胸がズキンっとした。

信用されない事がどんなに苦しいことか知ってるから。

「わ、私は、海桜 瑠海です。」

「本名じゃないよね?」

「私の芸名です。」

「瑠海ちゃん、セリフとかの練習一緒にしようね。」

奏さんは、ただそれだけを言った。

何で、そんな格好してるのか?とか、私の息詰まる言葉は決して

言わなかった。

「瑠海ちゃん、何か困ったことあったら言ってね。
押しかけちゃって、ごめんね。おやすみ。」

少し空気が軽くなったような気がした。

2人が出て行った後、私は1人ため息をついた。


そして、


私は、ただ、ただ、奏さんを信じて眠ることしか出来なかった。