黒沼さんは凍傷などは見られるものの、その目は開いている。しかし、黒沼さんが行方不明になった北野山は夏でも雪があり、夜には真冬のように冷え込むことで有名だ。そんな中二週間も生き延びることができるのだろうか。

「食事をして、体を必死に動かしていて助かったんですか?」

和都が訊ねると、安西さんは首を横に振った。黒沼さんのかばんには食料はなく、半分ほどしか水の入っていないペットボトルぐらいしかなかったらしい。そして、黒沼さんが発見されたのは洞穴の入り口のあたりだそう。

「その洞穴のあった辺りでは最近雪が降っていました。移動することはできなかったはずです」

「じゃあどうして生きれたんだろう……。熊とかは冬眠しますけど……」

和都がそう言った刹那、ニイッと結弦が笑う。そして安西さんに質問をした。

「安西先生、その黒沼さんが発見されたという洞穴に排泄のあとはありましたか?」

人は水を飲んでいなくても尿意を感じて体から出ます、そう結弦が言うと安西さんはしばらく考えてから口を開く。