「事件に何か病気が絡んでいる時はホームズの力を借りてるんだよ」

「そうなんですね」

和都は江藤刑事にお茶を出し、結弦と江藤刑事を見つめる。江藤刑事はお茶を一口飲んだ後に口を開いた。

「三日前に起きた強盗殺人事件、知ってるか?」

それは、閑静な住宅街で起きた痛ましい事件だ。ある家に強盗が侵入し、部屋を物色している最中にその家に住む夫婦と十歳になる息子が帰宅。夫婦は強盗に襲われて命を落としたものの、息子だけは逃げ出すことができた。

「息子くんは犯人の顔を見たから事情を聞きたいんだが、様子がおかしくなるもので話が聞けなくてさ……」

「おかしくなる?」

和都の問いに江藤刑事は、「自分の名前や家族の名前がわかっても、事件のことを訊ねるとわからないの一点張りなんだ。数時間すると元に戻るんだけど、自分がおかしくなっている間のことが記憶にないみたいで」と困ったように言う。

「その子はてんかんなどの持病はあるのか?」