茉莉花の花嫁

シャツとジーンズから先週に買ってきたダスティーピンクのＡラインのドレスに着替えると、茉莉花は美容院へと向かった。

そこで髪を整えて化粧を済ませると、
「ありがとうございましたー」

茉莉花は美容院を後にした。

「約束の時間まで後少しか…」

腕時計を見ると、茉莉花は呟いた。

普段は身につけることがないドレスとヒールを身につけて美容院で髪を整えてもらうと、何だかとても気分がいい。

「――プロポーズか…」

茉莉花はそう呟くと、カツカツとヒールを鳴らしながら待ち合わせ場所へと足を向かわせた。

その途中で紺のスーツを着た背の高い男とすれ違った。

茉莉花とすれ違ったその瞬間、男はハッとしたような顔をして後ろを振り返った。

「――ジャスミンの香り…」

待ち合わせ場所へと向かっている茉莉花の後ろ姿に、
「――茉莉花の花嫁（ﾏﾂﾘｶﾉﾊﾅﾖﾒ）だ…」
と、男は呟いた。