「……あぁ、そっか。先輩はこっちの方がいいんでしたっけ」
だけど、すぐにいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
左手を持ち上げたかと思うと、そのまま彼は右手で私の手を包み込んだ。
「ちょっ……、みっくん!?」
「……あ、久々に呼んでくれた。前意地悪してから、呼んでくれなくなりましたよね。やっぱり先輩のみっくん呼び好きなんで、続けてください」
「……っうるさい! 今井くん!」
「あっ、戻った」
ケラケラと笑われて、なんだか悔しくなる。……私はいつも彼に振り回されてばっかりだ。
悔しさに下唇を噛み締めると、その手を強く引かれる。
「からかってごめんなさい。ほら、電車行っちゃいますよ?」
彼の背後に見えた緑を基調とした普通列車。



