クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

 その後、社内はその噂でもちきりになり、紫織は目の前で見たということで女子社員たちにあれやこれやと聞かれて困った。

『どんな女の子だった? 美人?』
『社長どんな様子だったの?』

 騒ぎ立てたのは噂好きの陽子さんだけではない。
 そんな三面記事のような事件はそうそうあることじゃないし、むしろ噂をしない方が不自然な状況のなか、紫織も心を無にして答えた。

『すっごく可愛い女の子だったわ。社長は、うーん。なんていうか、気まずそうだったわね』

 社長という彼の立場をおもんばかり、最大限の忖度をしてもそれが限度。

 もっと正直に伝えるなら、女の子が泣いていて気の毒で仕方なかったとか、よほど彼が酷いことをしたに違いないと、言いたいところだ。
 それを言わなかっただけでも、彼には感謝をしてほしいくらいである。

 ――とにかくあれはない。

 あんなクズみたいな男になっていたとは。
 タイムマシンに乗って昔の自分に教えてあげたいくらい。心底ガッカリした。

 人前で手をあげた女の子だって相当勇気がいっただろうし、わざわざ会社に押しかけてあそこまでのことをするなんて、どれだけ悔しい思いをしたのだろう?

 あんな大人しそうな可愛い子に、あんなことをさせるなんて、信じられない!

 さすが、初日にあれほど酷いメッセージを送ってきただけのことはあるわ。

 あーあ。情けなくて涙も出ない。
 あんなクズ男に嫌われていたってもうどうでもいい!

「はぁ」

 さて、気分を変えてもうひとがんばりと思いながら紫織は席を立った。

 向かったのは二階の喫茶コーナー。

 今日は何を飲もうかなと考えた。

 喫茶コーナーの自販機には、緑茶に紅茶、コーヒーもココアも炭酸入りジュースも、色々な飲み物もあって、しかもタダだ。

 なんて素晴らしいのだろう。