クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

***

 紫織の実家は登録してある。
 その住所を頼りにタクシーに飛び乗った。

 ――どうか、どうか間に合ってくれ。

 『藤乃屋』の看板を見て、タクシーから飛び降りた。
 閉店中の札がかけられた店内に、紫織の姿が見えた。

 開いていたガラス扉から聞こえた声。
「宗一郎と、私が、きょうだい?」

「あの時には、そんなこととても言えなかった。ふたりが引き寄せ合ったのは血のせいなのかしらと思ったわ」

 ――違う! 違うんだっ!
「違うんです! それは」

 ハッとしたように振り返った紫織の母に訴えた。

「違うんです。兄妹ではなかったんです。わたしの母が養育費ほしさに嘘を。違うんです。兄妹じゃない」

「――宗一郎?」

「ごめん。紫織。ごめんな」

 床に膝と両手をついた。
「すみません。全て母の嘘でした。藤村さんは俺の父親じゃない。いただいた養育費は一日でも早く返させて頂きます。すみません。本当にすみません。申し訳ありません」

 ――ここまでは考えていた。
 謝って謝って。

 それで、これから先――。
 俺はどうしたらいいのだろう……。俺は。

「――宗一郎?」
 抱え込むように宗一郎の背中に手をまわした紫織は、訳も分からずただ彼の背中を撫でた。

「宗一郎さん、顔をあげてください。もう少し詳しく事情を聞かせてる?」

 屈んでそう声をかけた紫織の母の声色は、怒ってはいなかった。
「それで、お金を振り込んでくれていたのね? 宗一郎さん、顔をあげて、もう少し詳しく話を聞かせてくれる?」