次の日の帰り際。女子更衣室で制服の試着をしていると、総務の陽子さんがまた鏡原社長の噂話をはじめた。
聞きたくはないが、紫織に向って話を初めるので、仕方なく聞いていた。
「それでね、鏡原社長ってマンションを沢山持っているみたいなのよ。最低でも五か所。もっとあると思うわ」
「ええ? そんなにどうするんですか?」
「噂だとね、それぞれのマンションに別の女を住まわせているらしいわ」
「それって、付き合っている女性たちってことですか?」
「そうよ。紫織ちゃんが目撃した社長を殴った子。あの子もきっとそうよ。あの調子じゃ社長って独身主義者なのかもしれないわね。女に困らないしお金はあるし。ほら、たまにいるじゃない?そういうお金持ち。子供は認知するけど結婚はしないって人。社長もきっとそうよ。全然結婚する気はないって話だし」
自分の言葉に納得するように、陽子さんは、したり顔で頷く。
「そうだとしたら、社長ってサイテーですね。私なら自分が男でも、生涯たった一人の女性を愛して大切にします」
「あらまぁ、紫織ちゃんたらロマンチストね、結婚してみるとそんな甘い話は夢と散るわよ」
既婚者ならではの発言に、紫織も返しようがない。
「そんなぁ」
「夫婦なんて現実と向き合うだけだもの。その点ずっと恋人同士なら会いたい時だけ会えばいいんだもの。まぁ言ってみれば夢の中にいるようなものね」
「そんなもんでしょうか」
「そんなものよ。まぁ何にせよ鏡原社長はいいわぁ。私がもう少し若くて独身なら愛人のひとりにしてもらいたいわねぇ。いいじゃないのそのほうが、間違いなく愛情は冷めないわ」
陽子さんの話は、それはそれでわからなくもない。でも恋愛というのはそんな都合のいいものじゃなくて誠実であるべきだと思う。
現実を知って破れるなんてそんなの恋じゃない。
ただの好みの押し付けと我侭じゃないか。
そう思いながら、更衣室を出た紫織は憮然と眉をひそめた。
――とにかくガッカリだわ。
聞けば聞くほどガッカリ。
聞きたくはないが、紫織に向って話を初めるので、仕方なく聞いていた。
「それでね、鏡原社長ってマンションを沢山持っているみたいなのよ。最低でも五か所。もっとあると思うわ」
「ええ? そんなにどうするんですか?」
「噂だとね、それぞれのマンションに別の女を住まわせているらしいわ」
「それって、付き合っている女性たちってことですか?」
「そうよ。紫織ちゃんが目撃した社長を殴った子。あの子もきっとそうよ。あの調子じゃ社長って独身主義者なのかもしれないわね。女に困らないしお金はあるし。ほら、たまにいるじゃない?そういうお金持ち。子供は認知するけど結婚はしないって人。社長もきっとそうよ。全然結婚する気はないって話だし」
自分の言葉に納得するように、陽子さんは、したり顔で頷く。
「そうだとしたら、社長ってサイテーですね。私なら自分が男でも、生涯たった一人の女性を愛して大切にします」
「あらまぁ、紫織ちゃんたらロマンチストね、結婚してみるとそんな甘い話は夢と散るわよ」
既婚者ならではの発言に、紫織も返しようがない。
「そんなぁ」
「夫婦なんて現実と向き合うだけだもの。その点ずっと恋人同士なら会いたい時だけ会えばいいんだもの。まぁ言ってみれば夢の中にいるようなものね」
「そんなもんでしょうか」
「そんなものよ。まぁ何にせよ鏡原社長はいいわぁ。私がもう少し若くて独身なら愛人のひとりにしてもらいたいわねぇ。いいじゃないのそのほうが、間違いなく愛情は冷めないわ」
陽子さんの話は、それはそれでわからなくもない。でも恋愛というのはそんな都合のいいものじゃなくて誠実であるべきだと思う。
現実を知って破れるなんてそんなの恋じゃない。
ただの好みの押し付けと我侭じゃないか。
そう思いながら、更衣室を出た紫織は憮然と眉をひそめた。
――とにかくガッカリだわ。
聞けば聞くほどガッカリ。



