クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

 紫織は知らないが、彼は紫織をとても気にかけている。

 室井が残業していると、彼は時々フラリと現れて少し話をしたりする。
 そしてその時、仕事の話のついでという風ではあるが、紫織を気にかけている様子が見てとれるのだ。

『藤村さんはひとり暮らしなんですか?』
『え? いや彼女は友人とシェアしてるらしいですよ』

『シェア、ですか? 家族とじゃなくて?』
『あ――。藤村の家族は京都のほうにいるんですよ』

『京都?』
『どうかしました?』

『あ、いえ、女性の独り暮らしは大変だろうなぁ、ってね』
 などと話をしたもの、夕べのことだ。

 鏡原社長と会話には必ずと言っていいほど、紫織の話が出てくる。給料が少なくないかという心配までしていたこともあった。

 少なくとも彼には、紫織に嫌われる要素がないと思うのだ。

 人を嫌うのに、はっきりとした理由があるとは限らないのかもしれない。

 ――でもなぁ。本当にいい奴だと思うんだけどなぁ。


 そんなこんなでパーティは終わり――。


「紫織、タクシー一緒に乗って行くか?」
「あ、はいお願いします」

 ロビーで室井と紫織がそんな話をしていると、そこに「藤村さん、送りますよ、同じ方向だし」と荻野が現れた。

「え?」