確かに彼は荻野副社長のように口が上手いわけじゃない。
どちらかといえばいつ憮然とした表情をしていて不機嫌そうに見えるので、紫織のように大人しい女の子からすれば、同い年とはいっても近寄りがたい感じがするのかもしれない。
おまけに紫織は、会社の真ん前で彼が女性に平手打ちをされたその場に居合わせてしまった。ショックを受けて当然だろうと思う。
あの日、紫織は見たことないほど不機嫌そうな顔をして席に戻り、『最低』と吐き捨てるように言っていた。
『なんだ、どうした?』
『いま会社の前で、鏡原社長が綺麗な女の子に泣きながら平手打ちをされていたんです』
『ええ?』
『課長だから言いますけど、その女の子、ポロポロ泣いていて、よほど酷い別れ方をしたんですよ。社長ってクズですね』
『おいおい。なにか事情があるかもしれないし、わざわざ会社に押しかけてそんなことをするなんて、その女の子もおかしくないか?』
『そんなことを言ってると、課長まで最低に見えてきますよ』
けんもほろろに睨まれた。
実際、光琉に聞いた話でも問題のある女の子だったらしい。
でもそれを紫織に言ったところで、彼の印象を変えることはないだろう。



