具現化アプリ

☆☆☆

「ねぇミキコ、今日はなにも感じないの?」


教室へ戻ると同時にクラスメートたちが声をかけてくる。


「そ、それが……」


そう言い、あたしは口を閉じた。


みんなに見せるために用意した階段。


ピアノの時のようにちゃんと説明しなきゃ、見に行ってくれる子はいない。


あたしはチラリと吉田さんへ視線を向けた。


吉田さんはあたしをジッと睨みつけている。


腰を抜かしてしまったこと、あたしがそれを笑ったことを憎んでいるのかもしれない。


「今日は大丈夫そうだよ……」


「なぁんだ。今日はなにもないんだって」


「つまんなぁい!」


途端にクラスメートたちがちりぢりになる。


代わりに吉田さんが席を立って近づいてきた。


なんとなく嫌な気分がして逃げ出そうと思ったが、遅かった。


あたしは吉田さんにしっかりと手を掴まれてしまった。


「な、なに?」


「あたしはあんたのこと信じてないから」


そう言う吉田さんの目はすべてを見透かしているように見えて、思わず視線をそらせてしまった。