具現化アプリ

☆☆☆

5時間目が終わったころ、あたしは1人で屋上へと続く階段の前に来ていた。


周囲にひと気はなくて、普段からなんとなく薄暗い場所だ。


「ここに出現させたらどうなるんだろう……?」


少しの不安と、大きな好奇心。


あたしはアプリを操作して、階段の横にもうひとつの階段を出現させた。


「うわ、すごい!」


思わず呟く。


元々壁だった場所に2つめの階段が現れたのだ。


それは13段あり、一番上は真っ暗な闇に包まれているのだ。


ゴクリと唾を飲み込んで階段を見つめる。


あの闇の向うはどうなってるんだろう?


闇をジッと見つめていると、吸い込まれてしまいそうな気がして震えた。


「と、とりあえずこれでよし、と」


出現時間は2時間にしておいたから、放課後みんなが騒ぎ始めるのを見ることができる予定だ。


自分でやったことなのに闇を見ているとなんだか怖くなってきて、あたしは小走りに教室へと戻ったのだった。