具現化アプリ

勇気のある先生が手に触れようとしたけれど、幽霊として出現させているため触れることはできない。


どうにかピアノの前からどかすことができないかと、スプレーをかけてみたり、虫取り網で捕まえようとしてみたり、お経を唱えてみたりと、先生たちがひっきりなしに音楽室を出入りする。


それでもどうにもならないものだから、想像通り音楽の授業は中止になってしまった。


「今日のは本当に怖かったよ!」


帰り道、ノドカが関心したように言った。


「えへへ、そうでしょ? 最初は音楽室で鳴るピアノってだけにしようかと思ったんだけど、どうせだから手だけ出現させてみたの。そっちの方が怖いでしょ?」


あたしの言葉にノドカはうんうんと、何度も頷いてくれた。


「明日はなにをするの?」


「ふふっ。ノドカは楽しみに待っててよ」


あたしはそう言うと、スキップをして帰路についたのだった。