具現化アプリ

音楽室に近づいてくると、だんだんピアノの音が聞こえ始めてきた。


「この時間って誰もいないよね?」


「わかんないよ? 先生が弾いてるのかもしれないし」


そんな会話をしながら音楽室の前に到着した。


中からは上手なピアノの音が聞こえてくる。


「こんな風にピアノが轢けるのは、きっと先生だね」


誰かがホッとした声で言い、その声に促されるようにしてドアを開けた。


と、その瞬間だった。


全員がその場に立ち尽くし、言葉を失っていた。


音楽室の中では青白い手だけが浮かび、ピアノを弾いている。


その指先はまるで生きているように動き続ける。


手が奏でる音色はとても情熱的で、だけどどこか悲しい雰囲気のあるメロディだった。