具現化アプリ

「おい、なんの騒ぎだよ?」


騒ぎを聞きつけた男子生徒もやってくる。


普段なら女子トイレから追い出すところだけれど、今日だけは特別だ。


あたしは体をよけてトイレの中を見させてあげた。


途端に悲鳴を上げて逃げていく男子生徒。


その様子に思わず噴き出した。


「ねぇ、あの子は何かを訴えているの?」


クラスメートにそう聞かれて、あたしは一瞬言葉に詰まってしまった。


幽霊の細かな設定を考えていなかった。


「そ、そうだね。たぶん、大昔この土地で亡くなった子で、まだ成仏できないでいるの。だけど大丈夫だよ。みんなの楽しそうな声が聞こえてきたから、出てきただけだと思うから」


嘘をつくのは得意だった。


「さ、もう教室へ戻ろう。この子も、ずっと見られていたら成仏できないから」


クラスメートからこれ以上突っ込まれるのが嫌で、あたしはそう言ってそそくさと教室へ戻ったのだった。