具現化アプリ

そう理解すると途端に胸にポッカリと穴が空いた気分になった。


今あたしは桜翔太くんとデートをしていてとびきり幸せだったはずなのに、それが幻のように崩れ去っていく。


いや、これはもともと幻でしかないのに、楽しすぎてその事実を忘れてしまっていただけなんだ。


あたしはキュッと下唇を噛みしめて、桜翔太くんから手を離した。


「どうした?」


桜翔太くんは小首をかしげてあたしを見つめる。


どれだけ好きなアイドルが相手でも、偽物だということで気分が落ち込んでいく。


「ごめん。ノドカを探してくるね」


あたしは早口でそう言うと、桜翔太くんから離れたのだった。