具現化アプリ

翔太くんだってどんな服でも似合いそうだ。


あたしは白いTシャツを手に取って「これとかどう?」と、聞いてみる。


「かっこいいじゃん。気に行ったよ」


その言葉に嬉しくなって1人で盛りあがってしまいそうになる。


どうにか嬉しさを押し込めてTシャツをレジへ持っていく。


「これはあたしからのプレゼントにするから」


そう言って財布を出そうとしたところで、翔太くんがあたしの手を掴んで止めていた。


「どうしたの?」


「それより、ミキコの服を見に行こうよ」


「でも……」


翔太くんはTシャツを見つめると、左右に首を振った。


まるで『いらない』と言われているようで、心がざわつく。


どうして?


そう質問する前に、気がついた。


そうだ。


翔太くんは今日のために出現させた偽物だ。


長くても24時間経過すれば自然に消滅してしまう人間。


Tシャツなんて買っても、意味がないんだ。