「ばかっ…。真似しないでよ」
あたしは慌てて机の引き出しの中から羽根の額を取り出し玄関まで走った。
きっとこの額は、あたしが持ってちゃ駄目なんだ。
お互いが持ってないと駄目なんだ。
靴を慌てて履くあたしに「ちょっと里奈どこ行くのよ」とママはソワソワしていた。
「ごめ…ママ。今日は帰らないかも」
「えっ、帰らないって…今日は里奈の為にご馳走作ったんだから」
「本当ごめんね。帰ったら食べるから」
“もぅ”と言うママの声を耳にして、あたしは玄関を飛び出した。
走りだしてすぐに「ちょっとー乗んなよ」と女の人の叫ぶ声が聞こえた。
その声であたしの足はピタッと止まり後ろを振り返った。



