ふたつの羽根


なんとなくそう思った。

でも田上は「それはねぇよ」と言って足を進める。


「そんな事より陸ならお前を大切にするよ」

「でも…」

「でもじゃねぇよ。“何もねぇ”って言ってんだったら信じろよ」


信じたいけど…

信じたいけど…


1週間前…

ママの頼まれ事で買い物に出た。

よりによって空からは大粒の雨を降らせていた。


【早く帰らなきゃ】


透明のビニール傘をさし反対の手にはビニール袋を握りしめ帰る途中、あたしの足は重い鉄が括り付けてあるみたいに動かなくなった。 


店の前で雨をしのいでいる彩乃さんが立っていた。目が合った瞬間、口元の端をあげ笑みを漏らし口を開く。


【陸と早く別れてくれるかな?】