ふたつの羽根


急斜面を下りて川の近くまで行くとそこは丁度、川瀬にあたる位置だった。


田上はそのまん前で腰を下ろし胡坐を掻く。


少し離れた学校から微かにチャイムの音が聞こえる。 


「答えまだ言ってなかったよなぁー」


田上は呟きながら足元に落ちている小石を手に取りポチャンっと川に投げ捨てた。 


あたしは田上の隣に腰を下ろし「答えって?」と首を傾げる。


「うん。お前、聞いてきたじゃん“何で付き合わねぇの?”って」 


あたしの頭の中で何ヵ月か前の事が蘇る。

確かに聞いた。

授業中に…


“田上は何で誰とも付き合わないの?ダルいとか?”


真っ白なノートに書いた言葉。 


あの時は、あたしが聞いたのに逆に聞き返されて田上の答えなんて聞いていなかった。