ふたつの羽根


そっと腕を離す田上から、あたしは目を逸らし足を進める。 


「おーい。逃げんなよ」

「逃げてないよ」


精一杯、振り絞る声。


「逃げてんだろ。ちょっと散歩しよーぜ」

「散歩って…。教室もどんなきゃ」


田上はうっすら笑い「へー…、じゃあ何で下駄箱まで来てんだよ」とあたしの顔を覗き込む。


「そ…それは…」

「それは…逃げる為っしょ?」


田上はいつも通りの笑みを漏らし「行くぞ」と言って靴に履きかえた。


あたしは深く深呼吸をし、田上に従うように靴に履き替え田上の足元を見ながら後を着いていく。


田上が足を止めた所は、いつも帰りに通る川原沿い。