ふたつの羽根


あたしが来る前に何があったかは分からないが陸と拓真先輩の口元からは血が出ていた。


「お前、彩乃とはどーなってんだよ」


…彩乃さん?

昨日、あたしが言ったから? 


勢いよく怒鳴る拓真先輩に「あ?だから何もねぇって言ってんだろ」と陸は声を張り上げ拓真先輩の手を振り払った。


「何もなかったら里奈ちゃん泣かせてんじゃねぇよ。お前が中途半端たがら里奈ちゃん泣いてんじゃねぇのかよ」 

「うっせーよ!何もねぇって言ってんだろ。お前にいちいち言われたくねぇよ」 


陸が吐き捨てた後、一瞬にして拓真先輩の目付きが変わり、もう一度陸の胸ぐらを掴んでフェンスに押しつけた。