「いや…違うけど、陸の…」
「あっ、陸くんか。陸くん元気にしてるの?」
「あぁ…」
「そっか」
美紀さんは微笑んで、チラッと左腕にはめてある時計を見つめる。
「あっ、電車乗り過ごしちゃう。じゃあね」
軽く手を振る美紀さんに「気をつけて帰れよ」と拓真先輩は返し、小走りに走って行く美紀さんの背中をジッと拓真先輩は見つめていた。
少し離れた所で美紀さんの足はピタッと止まりクルッとあたし達の方に振り向いた。
どうしたんだろう…
「たくまーッ。今、幸せ?」
少し離れた所から美紀さんの声が飛んでくる。
溢れる人の中、美紀さんの姿が時たま埋もれ、歩く人達は不思議そうにあたし達を見ていく。



