ふたつの羽根


瞬間的に目を閉じた時「無理」と拓真先輩の声が漏れる。 


どーして?と思う自分と良かったって思う自分が、また攻めぎ合う。


唇を噛みしめ恐る恐る目を開けると「その場しのぎの快楽ならやらねぇよ」と拓真先輩はソファーに背をつけた。 


“その場しのぎの快楽”


その言葉に胸がチクチクと痛んだ。だって、当たっているから。 

本当、あたし馬鹿みたい… 

拓真先輩にしても陸にしても何してんだろ。


本当、愚かすぎてるよ…あたし。


真上にある蛍光灯があまりにも眩しくて余計に涙が溢れそうだ。

もっともっと、これ以上出そうな涙を無理矢理おし戻し、あたしは身体を起こし口を開いた。


「ごめんなさい…」