ふたつの羽根


熱気を増すこの空気のせいか、陸は上半身裸だった。

細身でガッチリとした身体にドキンと胸が高鳴る。


「入れば?」


あたしは頷き、陸の後ろをついて部屋まで行った。

本当にさっき帰って来たばかりなんだろうか、クーラーは付けてあるけど部屋の中はムシムシと暑い。


床にペタンと座り込むあたしに「どーした?」と陸は声をかける。


「うん…」

「うんって何?」


陸は軽く笑いながらあたしの隣に腰を下ろす。


あたしは陸の部屋に何回入ったんだろうか。

じゃあ彩乃さんは何回?


“年下なんて見向きもしない奴なのよ”

“まだヤってないんだ”


ムカつくぐらい流れ込んでくる言葉に、あたしは額に手をあてる。

じっとしている間、破裂しそうなくらい胸が苦しくて、あたしの口は信じられないほど開いていた。