ふたつの羽根


純也が転校。

一度は好きになった人…


“俺ん時より先輩のほうが好きすぎてる”


純也から言われた言葉。

正直そうかも知れない。


あたしの今の心の中は陸しかいないんだ。


止めていた足を動かせ階段を上りきると思わぬ人と遭遇した。



「…田上」


壁に背をつけている田上と視線がぶつかり合うと、思わずさっきまで動いていた足はすぐに止まる。


どうしよう…

さっきの会話聞かれていたかも。


目を逸らして足を進めるあたしに「待てよ」と田上の低い声が耳に入った。


「何?」


振り向いた瞬間、田上は深く息を吐き眉を寄せた。


「里奈、やっぱり何かあんだろ?」

「えっ?」

「えっ、じゃねぇよ!あいつの言ってた事は確かだな。お前いつもと様子違いすぎ」