「陸、会うの?」
あたしの震えた声が通話口から入り込む。
「あぁ…」
沈黙の間、ただただあたしは頭の中が白紙状態になっていた。
電話をあてている左耳から雑音が聞こえるのと反対側のあいている耳からは時計の針の音とが同時に聞こえる。
そんな音がかき消されるようになった時「嫌?」と陸の声が耳に入った。
「…じゃん。当たり前じゃん、嫌だよ」
数秒の沈黙もないぐらいに「わかった」と陸は返してきた。
「えっ?」
「里奈が嫌って言うのなら会わねぇよ。安心しろ」
「本当に?」
「あぁ」
テーブルの上に置いていたペットボトルから水滴が溢れるように落ちていた。
それと同じように、あたしの想いも溢れていく…
会いたい。



