手を上げた方の肩には、しっかりと鞄が掛けてあり、反対側の手にはもう一つの鞄が握られていた。
…あたしのだ。
有亜は笑顔で、あたしの鞄を差し出した。
「はーい。すっごい忘れ物」
「…ありがと」
あたしはその鞄に手を伸ばし自分の体に引き寄せて抱え込む。
「携帯鳴ってたよ。って言っても神藤先輩だけどね」
「えっ?」
「昼休みだったかな。神藤先輩あたし達の教室に来たよ。里奈が電話でねぇって…」
「陸、学校に居たんだ…」
「なんか来たばっかみたいだったよ。心配してたよ?詳しい内容は知らないけど里奈が居なくなった後、川崎先輩も心配して来てたし」
拓真先輩が…?
そっか、そうだよね。あたし無言のまま帰ってったし…



