ふたつの羽根


「…な。…里奈」


ドア越しから何度も叫ぶママの声であたしは目を覚ました。 

窓を見ると外は真っ暗で、この時あたしは今まで寝ていたんだと気付く。


「里奈、開けるわよ」


再度ママの声で少しボーっとしていた頭が一気に冴え、あたしは起き上がる。


ドアを開けてエプロン姿のママを見て口を開いた。 


「何?」

「何じゃないわよ。有亜ちゃん来てるわよ」

「えっ有亜?」

「里奈、今日途中で帰ったんでしょ?有亜ちゃん下で待ってるわよ」 


ママは少し呆れ口調で言って、スリッパの音をパタパタと言わせながら階段を下りていく。 


その後を追うようにして、あたしも階段を駆け下りた。

下りてすぐの玄関の所まで行くと有亜は微笑んで軽く手を上げた。